悠久の時の流れを生き、休むことなく花を咲かせてきた「山高神代桜」

神代桜は、樹齢2000年とも言われるエドヒガン種の古木で、日本三大桜の一つとされております。(岐阜県本巣市「薄墨桜」・福島県三春町「滝桜」) 伝説によると、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東国へ遠征された際この地に立ち寄られ、記念にこの桜をお手植えされたと伝えられています。 また、鎌倉時代に日蓮聖人がこの地を訪れた際に、桜の衰えを見て憂い樹勢回復を祈願されたところ再生したと伝えられおり「妙法桜」の名でも呼ばれています。 大正11年には、国の天然記念物に指定されました。当時は、高さ13.6m、枝張り東西27.0m、南北30.6m、高さ1.5m地点の幹回りは10.6m、の巨木でありました。 平成2年には「新日本名木百選」にも指定されました。 幾度となく自然災害にあい、最盛期の大きさに比べると小さくなったものの、高さ約10メートル、東方に太く力強い枝を伸ばし、周囲約12メートルもあり、それらを支える幹の姿からは、「生命」を感じさせてくれます。

桜世界へ!

現在、神代桜の子桜は日本全国、更には世界各地に植えられています。 そしてその役割は、人と人を結ぶ、「縁」となって私たちに絆をもたらしてくれています。 これまで、国交の記念事業などにも神代桜の苗木が贈呈され、ハンガリー、オーストリア、イタリアバチカン、イタリアサンマリノ、ポーランド、オーストラリア、ベトナム、台湾、 など洋の東西を問わず世界各地に「絆の種」が行き渡っています。

平成20年には、オーストリアのザルツブルク出身の指揮者カラヤンの生誕百年記念事業で、同氏が好んだ桜の植樹が計画され、他の三大桜の苗木とともに神代桜の苗木がオーストリアに渡りました。 これからも縁となって人と人とを結んでくれるよう、また神代桜にはそのような力があると確信しています。

復興の願いを込めて!

2011年、3月11日に起きた東日本大震災で、岩手県大槌町は甚大な被害を受けました。 津波に襲われた同町立図書館の蔵書は泥にまみれてしまいました。その中から発見されたのが、日本画家の中島千波さんが描いた神代桜の版画(リトグラフ)でした。 修復を試みたものの汚れがひどく断念せざるおえず、この経緯を耳にした中島千波さんが、同じ版画の寄付を申し出で、平成24年(2012年)に満開の神代桜の下で贈呈式が行われました。

この時、版画の贈呈に加え、神代桜の種子から育てた苗木を、大槌町の復興・街づくり活動を行う団体「おらが大槌夢広場」に寄贈しその後も大槌町との交流が続いております。 また、一般財団法人ワンアースの「きぼうの桜」プロジェクトとして、東日本大震災で津波被害にあった地域において、津波到達地点に宇宙桜(超長命で巨大化する日本各地の名桜の直系樹)を点々と植え、千年後まで風化しない復興のシンボルとして願いを込めました。

桜宇宙へ!

2008年11月、神代桜の種は、「花伝説・宙(そら)へ!」というプロジェクトのもと、全国各地の花の種と共にスペースシャトル・エンデバー号で国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」に向けて旅立ちました。

種は、約8ヶ月間の間、無重力の空間を旅行し、2009年7月に宇宙飛行士・若田光一さんと共に地球に帰還しました。 種はその後、地元武川中学校の生徒により播種され、2粒だけが発芽しました。 そのうちの一粒が實相寺境内に植えられ、現在では花を咲かせるにまで成長しました。 無重力の影響を受けた桜の木が、どのように花を咲かせるのか、今後の成長が楽しみです。